先頃、シカゴ美術館が収蔵している作品から、およそ52,000点をパブリックドメインとして無料公開するなど、いま世界中で歴史的名作のデジタル・アーカイブ化の流れが進んでいます。
今回は、世界の名画を無料ダウンロードできる美術館サイトをまとめてご紹介します。著作権の消滅したパブリックドメインの作品が中心なので、クレジット表記なしで無料ダウンロード、二次創作での利用が可能です。紹介するサイトを合わせると、合計550万枚近くの貴重な資料や作品を網羅しています。このリストは、随時アップデート予定となっています。
世界の名画を無料ダウンロードできる美術館サイト一覧
メトロポリタン美術館
アメリカ・ニューヨークにある世界最大級のメトロポリタン美術館。提供されているのは、同美術館が収蔵している美術品406,000点で、クレジット表記の必要もなく、商用利用も可能な高画質イメージデータとなります。歌川国芳など日本の作品も数多く、世界的にここでしか見ることのできない名画をたくさん見つけることができます。
すべてのダウンロードは、The Collection ページから行うことができます。
ニューヨーク公共図書館
ニューヨーク公立図書館(英: New York Public Library)が公開している、88万枚を超えるデジタル資料をダウンロードできる「NYPL Digital Collections」。歴史的に価値の高い書物や写真、原稿、地図、楽譜などの画像は、どれも高解像度でスキャンされており、無料で利用できます。
もちろん、日本文化に関するデータもたっぷり。ためしに検索フォームに「Japan」と入力すると、2300枚を超える資料が見つかりました。歌川広重の東海道五十三次コンプリートのほか、江戸時代に描かれた浮世絵や、源氏物語なども。
公開されている作品の中には、およそ20,000枚を超える地図をあつめたプロジェクトLIONEL PINCUS AND PRINCESS FIRYAL MAP DIVISIONも。古いもので16世紀、新しいものでも1890年代に描かれた地図イラストがコレクションされており、無料ダウンロードできるのはもちろん、商用利用にも対応したパブリックドメインのCC0ライセンス。
アムステルダム国立美術館
アムステルダム国立美術館(蘭: Rijksmuseum Amsterdam)では、オランダに関連するアーティストを中心に、400,000枚の世界的名画をパブリックドメインとして公開しており、個人および商用利用にも対応しています。
Facebook IDでログインできたり、お気に入り機能を使って自分だけのギャラリーを作成できたり、さらには気に入った作品をポスター印刷できるサービスまで揃うなど、コレクションのデジタル化と無料開放を積極的に進めている美術館のひとつ。
ナショナル・ギャラリー・オブ・アート
ナショナル・ギャラリー・オブ・アート(英: National Gallery of Art、略称はNGA)は、アメリカ・ワシントンにある国立美術館で、コレクションのデジタル無料公開の波にのって、45,000枚の作品を無料公開しています。ゴッホやモネ、アンリ・ルソーなど19世紀ごろのアーティストの作品が数多く公開されている点もポイント。
ロサンゼルス・カウンティ美術館
アメリカ西海岸で最大級規模のロサンゼルス・カウンティ美術館 (英: Los Angeles County Museum of Art、通称LACMA )では、現在23,000枚を超える世界的名画がデジタル公開されています。検索するときに、「Show public domain images only」にチェックを入れることで、パブリックドメインの作品のみを探すことができます。歌川広重や葛飾北斎などの日本画も、多数収蔵されています。
J・ポール・ゲティ美術館
1954年に石油王ジャン・ポール・ゲティがアメリカ・ロサンゼルスに建てた、J・ポール・ゲティ美術館(英: J. Paul Getty Museum)。世界中から集められた名作130,000点が、この度デジタルアーカイブ化され、用途に関係なく自由に利用することができるようになりました。
大英図書館
世界最大級の1億5000万点以上もの資料を所蔵している大英図書館(英: British Library)は、世界で最も重要な研究図書館と言えます。17〜19世紀にかけての資料をスキャンした100万枚にのぼる、地図やイラスト、タイポグラフィーをFlickr上で公開しています。作品はどれも著作権の消滅したパブリックドメインで、誰でも自由に利用することができます。
バイオダイバーシティ遺産図書館
バイオダイバーシティ遺産図書館は、英米の10の自然史博物館図書館・植物園図書館・研究機関が協同で構築した、生物多様性(biodiversity)に関する文献をデジタル化してオープンアクセスで提供しており、その数はなんと2百万枚を超えています。18世紀から19世紀に発行された航海記録、動物誌や植物誌など、自然に関するイラストが中心に公開されています。
公開されている作品は、どれも著作権が消滅したパブリックドメインとなっているので、どんな用途でもお好みで利用することができます。
ウェルカム図書館
イギリスを拠点とした医療に特化したユニークな図書館で、無料公開されている100,000枚を超えるコレクションは、古い時代からどのように治療が行われてきた知る貴重な資料ばかり。
公開されている作品は、どれも著作権が消滅したパブリックドメインとなっているので、どんな用途でもお好みで利用することができます。
ニュージーランド国立博物館
ニュージーランド国立博物館テ・パパ・トンガレワ (英: Museum of New Zealand Te Papa Tongarewa) は、太平洋諸島の歴史的な美術品や現代美術品を所蔵している、1998年開館の国立博物館です。
デジタル・アーカイブとして公開されている作品のおよそ半分、およそ14,000点に関しては、クレジット表記することで個人利用可能となっており、17,000点は著作権の消滅したパブリックドメインで、どんな用途にも自由に利用できます。
アメリカ議会図書館
アメリカ議会図書館(英: Library of Congress)は、蔵書の数や毎年の予算額、職員数などすべての点で、世界最大規模の図書館で、1800年にワシントンD.C.に設立されました。
数百万点におよぶコレクションを閲覧することができ、そのなかでも作品を個人、商用にかかわらず自由に利用できる「Free-to-Use」コーナーが設けられ、無料でダウンロードすることが可能となっています。このコーナーは、カテゴリー別に細かく分類されているので、はじめて訪れたひともお好みの作品を見つけやすいでしょう。
コペンハーゲン国立美術館
コペンハーゲン国立美術館(英: The National Gallery of Denmark 通称SMK)は、デンマークにある美術館で、15世紀ごろに描かれたアンドレア・マンテーニャの「贖い主としてのキリスト」など、世界的にも歴史的にも貴重な、ヨーロッパを中心とした作品が数多く収蔵されています。
作品のデジタルパブリック化に対しても積極的で、現在25,000枚の名画が高解像度のJpegファイル形式で無料公開されています。作品は、どれもパブリックドメインとなっており、用途に限らず自由に利用、改変することができます。検索フィルター機能を用いることで、より手軽に作品を探すことができる点もポイントです。
シカゴ美術館
シカゴ美術館(英: The Art Institute of Chicago)は、ニューヨークのメトロポリタン美術館、ボストンのボストン美術館と並んで、アメリカの3大美術館にも数えられ、モネやルノワールなど印象派コレクションは、フランス国外では最大規模と言われています。以下のエントリーで詳しく使い方やダウンロード方法を紹介しています。
スミソニアン博物館
アメリカ・ワシントンDCにあるスミソニアン博物館(英:The Smithsonian)は、科学、産業、技術、芸術、自然史など19の博物館から構成され、その収蔵物は1億4200万点を超えるとも言われている、世界的にも有名な博物館のひとつです。
その中でも、日本画を含むアジア・アートとアメリカ・アート合計40,000枚近くを閲覧でき、その多くがJpegファイル形式で無料ダウンロードできます。クレジット表記することで、個人及び非商用での利用を行うことができます。作品の個別ページの詳細に、Save this imageと書かれていればダウンロード可能で、幅4,200pxを超える高解像度も魅力です。
参考URL: https://www.freersackler.si.edu/collections/ |
オスロ国立美術館
オスロ国立美術館(ノルウェー語: Nasjonalmuseet for kunst)は、ノルウェーの首都オスロにある美術館で、1800年~1900年代のノルウェーの画家の作品などおよそ40万点が収蔵されています。特に、エドヴァルド・ムンクのコレクションが有名で、4枚あると言われている「叫び」の1枚が公開されています。
デジタル・アーカイブ化の無料開放によって、ムンクの叫びも含む、合計3万枚の名画を無料ダウンロードすることができます。個人および非商用での利用が可能ですが、利用の際にはクレジット表記をお忘れなく。
ゴッホ美術館
ファン・ゴッホ美術館(英: Van Gogh Museum)は、オランダのアムステルダムにある、日本人にも特に人気な、フィンセント・ファン・ゴッホの作成を中心とした美術館で、コレクションには油彩画200点以上、素描画約500点、書簡約750点が含まれます。これらのコレクションを通して、ゴッホの生涯と業績を辿ることができます。
世界各地で行われているゴッホの展示会でも見ることができない、ゴッホの妻への手紙など、歴史的に貴重なお宝、名画をたっぷり収蔵した美術館と言えます。公開されている画像は、どれも無料ダウンロードできますが、商用利用に関しては、専用のリクエストフォームを送信する必要があります。
ParisMusées
パリ市立近代美術館やプティ・パレ、カタコンブなど、パリの14の市立博物館を統括する公共団体であるParisMuséesが発表したこのコレクションは、フランスを代表する世界的な名画を数多く含み、用途に関係なく自由にダウンロードすることができます。クレジット表記なしで商用利用も可能な完全オープンソース化となっています。
公開されている画像は、歴史的価値の高い作品ばかり15万点以上で、クレジット表記なしで無料ダウンロード、二次創作での利用が可能なクリエイティブ・コモンズ0(CC0)ライセンス付きのパブリックドメイン。
クリーブランド美術館
クリーブランド美術館(英:The Cleveland Museum of Art)は、アメリカ合衆国オハイオ州クリーブランド市にある全米有数の規模の総合美術館。
美術館のおよそ半分に当たる30,000点を超えるアートワーク作品が公開されており、それらは6万個以上のタグ入力によって細かく分別されています。公開されている作品はどれもCreative Commons 0ライセンス付きのパブリックドメインで、自由に利用することができます。
モーガン図書館 & 博物館
モーガン図書館&博物館(英: The Morgan Library & Museum)では、主に15世紀から19世紀にかけて作成された、10,000枚を超える手書きイラスト集を無料でダウンロードできます。
もともと研究者や学生のリサーチ用に公開されており、キーワードや年代、カテゴリ等によって絞り込み検索を行うことが可能。
その他
ここでは、著作権が消滅したパブリックドメインの作品を集めている、無料ウェブサイトをいくつかご紹介します。セレクションがどれも素晴らしく、しかも無料ダウンロードもできるなど、デザイナーのアイデア出しにもオススメですよ。デザイン制作に活用してみてはいかがでしょう。
rawpixel
rawpixelは、素敵なデザイン素材を配布しているサイトで、その中にある「Public Domain」では、パブリックドメインとなっている作品をさまざまなカテゴリーで分別、セレクションしています。さらに、色調補正を行うことで、より魅力的な色合いで表現されている点もポイントです。
日本の木版画を集めた「Japanese Wood block Prints」の項目を開いてみると、どれも素晴らしい作品ばかりがまとめられているのが分かります。
The Public Domain Review
さまざまなウェブサイトや美術館などから、著者自らのセレクションでパブリックドメインとなった写真やイラスト、世界的な名画について詳しく解説している The Public Domain Review。2011年から続く人気老舗ブログで、扱っている作品のほとんどが無料ダウンロードでき、見ているだけで新しい発見があります。
Old Book Illustration
サイト名の通り、古い書物に挿絵として使われているイラストや、アンティークなスケッチ画などを高解像度でスキャンし、集めている Old Book Illustration。スタイル別に別れているので、より手軽に目的のデザインを探し出すことができます。
世界の名画をオンラインで鑑賞、閲覧できるサイト
以下は、世界中から集められた作品を、オンライン上で鑑賞できるバーチャルギャラリーサイトを一緒にまとめています。資料や素材のダウンロードはできませんが、航空券を買って直接美術館を訪れなくても、世界中の名画に手軽にふれることができます。
- Google Art & Culture | 世界各地の美術館、なんと1,600館に所蔵されている作品をパソコンやスマホで鑑賞できるサービス。日本からは81の美術館や博物館が参加しています。アプリを使えば、撮影したセルフィーに似た作品を探してくれたり、色から作品を探してくれるAI配色サービスまで。
- Harvard Bauhaus Collection | 1920年頃にドイツで誕生し、モダンデザインの基礎として、今なお世界中の建築やデザインなどさまざまな分野に影響を与えている「バウハウス(Bauhaus)」。そんなバウハウスの世界最大級のコレクション、およそ30,000枚。
- アイリス&ジェラルド・カンター視覚芸術センター | スタンフォード大学の中にあるCcanter Art Centerで公開されているアート作品のおよそ95%にあたる、45,000もの作品を閲覧できます。アンディ・ウォーホルのフィルムネガなど貴重な作品も。
- ノグチ美術館 | 20世紀を代表する彫刻家・デザイナーのひとりイサム・ノグチ(1904–1988)自身の手で1985年に創設された、ニューヨークにある美術館。彫刻はもちろん、写真やデジタル化されたイラストなどおよ60,000点の作品を閲覧できます。
- MoMa The Collection | 「モダンアートの殿堂」、ニューヨーク近代美術館に収蔵されている20万点の作品の中から、およそ80,000点を高解像度で閲覧できます。
- Guggenheim Collection Online | アメリカを代表する625人のアーティストの、約1,700枚の作品を高解像度のデジタル・アーカイブとして無料提供しています。
- スタンフォード大学カンター視覚芸術センター | 38,000点を超える貴重なデザインを、高解像度画像で閲覧でき、より拡大できるズーム機能にも対応。
- ホイットニー美術館(英: Whitney Museum of American Art) | アメリカアートが好きな人はたまらない、23,000枚の名画コレクション。ダウンロードできますが、解像度サイズがやや小。
- テート(英: The Tate) | イギリスを代表する近現代美術を多く収蔵しており、その中からおよそ70,000点がデジタル化されています。クレジット表記でシェア可能で、個人および非商用で利用できます。
- Codex Atlanticus | モナリザを描き、建築や解剖学も極めた“万能の天才”ダビンチが、約40年間にわたって書き綴ったノート「レオナルド・ダ・ヴィンチ手稿」。書き残した全手稿のうち約3分の2が失われ、現存するのは約5000ページと言われています。大英博物館がデジタル化した570枚のノートとナショナル・アート図書館が公開したノートを合わせた、「アトランティコ手稿」の完全デジタルコレクション。(サイト右下「EN」で英語に切り替え、ページ上部「Explore the Codex」ボタンよりどうぞ。)