Metaの初代Ray-Ban Storiesは驚くほどシンプルで、画期的なテクノロジーが使われているようには見えなかったが、足掛かりにはなったかもしれない。見た目も意外なほど普通のメガネにそっくりだったが、それこそがMetaの考える出発点だったのだろう。オーディオ機能に特化したEcho Framesを作っているAmazonなどの企業も、そうした製品を足掛かりに、時間をかけて機能を加えていくのかもしれない。
次に来るのはディスプレイ機能だろうか。Metaが次のメガネでそれを実現するとしたら、今までにないタイプのレンズを使うことになるだろう。あるいは、オーバーレイを搭載するかもしれない。実際、導波管(目に画像を映し出す技術)などのディスプレイ技術を搭載したスマートグラスはすでに存在している。もっとも、この状況は、度付きレンズを簡単に装着できるメガネの実現がさらに遠のく可能性をも示している。Metaは日常的に使えるメガネの開発を目指しているが、もしそうなら、先に筆者が述べたように、店頭で簡単にサービスを受けられるようにすることから始めるべきかもしれない。
スマートグラスの操作性
ARにはマウスもトラックパッドもキーボードもなく、共通規格のコントローラーもない。多くのVRヘッドセットには、ゲームパッドを2つに割ったようなデュアルコントローラーがついてくるが、ARヘッドセットの場合はハンドトラッキングか、スマートフォンのインターフェイスを利用するかの二択となることが多い。しかも、どちらも理想的とは言えず、うまくいっている時でさえぎこちない。MicrosoftのHoloLens 2は、ホログラム上で指をピンチするか、エアタップすることで操作できるが、普段使いのデバイスとしては十分ではないと感じる。Magic Leapなど、一部のARヘッドセットには専用の小さな携帯型コントローラーが付く。インターネットと接続したリングを使用する機種も見たことがある。
つまり、スマートグラスの操作方法はまだ確立されていない、ということだ。Meta(Facebook)は手首に装着した専用機器で指の動きから神経信号を読み取り、正確なコントロールを実現しようとしているが、この技術が2022年中に実用化される見込みはない。Metaは、この手首装着型のコントローラーに先立って腕時計型のデバイスを開発するかもしれない。Appleから登場すると期待されるVRヘッドセットも、(想像の域を出ないが)操作するのに「Apple Watch」を使う可能性がある。いずれにしても、2022年はスマートグラスをどう操作するかが未解決の最重要課題となるだろう。
メタバースと視力の関係
ここまで来れば、メタバースを目指す企業の多くがヘッドセットを使わない体験を提供しようとしている理由がわかるだろう。今のところ、日常的な利用に耐えるARグラスはなく、現在入手可能なARグラスのほとんどはメガネを必要とする私の視力では使えない。私の近視は確かに極端な例かもしれないが、世の中にはさまざまな顔の形や視力の人がいる。そのすべてにどう対応していくのか、答えはまだ出ておらず、今後も試行錯誤が続く。
少なくともVRグラスの場合は、メガネをかけたまま装着できるものがいくつかある。しかし私が使っているメガネは幅が広いので、VR用にもっと幅の狭いメガネを新調しなければならない。これは負担が大きいし、使える場所も限られる。メタバースでは、このような限定的なテクノロジーは支持されないはずだ。スマートグラスの開発は2022年も続く。つまり、少なくとも当面はVRヘッドセットの進化がメタバース、さらには複合現実(MR)の未来を定義することになる。
今後の開発では、スマートグラスと通常のメガネを共存させる方法もぜひ考えてもらいたい。